構成組織専用ページへログイン

知識をつけよう

HOME > 知識をつけよう > 法律マメ知識

知識をつけよう

法律マメ知識

【損害賠償】:損害賠償

Q. 買い物中、誤って商品を壊してしまいました。弁償しなければいけないでしょうか。
A. 1.
このように、相手に迷惑をかけてしまったときに弁償しなければならないのか、という問題は、「不法行為」に当るか否かということです。交通事故、ケンカ、不倫など、どれも「不法行為」の問題です。極めて多くの場面で問題となることですから、少し詳しく述べます。
 「不法行為」は、民法第709条で「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」と規定されています。つまり、@故意又は過失があること、A損害があること、B損害が故意又は過失に因るものであること、が要件となります。
 
2.
@の「故意又は過失があること」とは、わざとやったり間違ってやってしまったりすることです。弁償(損害賠償)する責任は、故意・過失があってはじめて生ずるのです。自分に落度がないのに、弁償しなければならないということはないということです。但し、特別な場合については、例外がありますが、日常生活では考えなくてもよいでしょう。
過失とは簡単に言うと、通常の注意をしておればミスをしないのに、注意を怠ったためにミスをしたというものですが、実際にはこの判断も難しいものです。
Aの「損害があること」は当然でしょう。損害がなければ、弁償(損害賠償)ということ自体あり得ないからです。ただ、問題は損害額の算定がとても難しいのです。通常は、不法行為がなかった状態(何事もなかった状態)と、不法行為のために生じた状態(結果)との「差額」が損害額といえます。たとえば、交通事故によって自動車に損傷が生じた場合、事故がなかったときの状態に修復するのに要した修理代が「差額」であり、損害となります。もっとも、自動車の時価がもともと50万円なのに修理代が60万円もかかるというような場合は、「差額」が50万円ということになりますから、損害は50万円となります。
 しかし、慰謝料と言われる精神的損害は、そもそも「差額」を金銭で見積もることができませんから、日本人の感覚を基にして、裁判所が蓄積してきた判例が、ある程度の基準となっています。たとえば、不倫をした場合、弁償額は200〜400万円が多いと思います(勿論、不倫期間、程度、その他の事情によって異なってきます)。
Bの「損害が故意又は過失に因るものであること」、即ち因果関係がなければなりません。これも当然のことですが、この因果関係は、「風が吹けば桶屋がもうかる」というように、どこまでも広がっていくものです。たとえば、私がAさんに、家へ遊びに来ないかと誘い、Aさんが自動車を運転して、私宅へ来る途中事故に遭ったとしたらどうでしょう。私が誘ったから、故に遭ったのであり、因果関係はあります。しかし、これはおかしいですよね。
そこで、原因と結果との間に、通常生じるであろう、社会生活上ここまでは相当であろうという範囲の因果関係だけを問題にするのです。とはいえ、愛煙家の隣の事務員さんが肺炎になったとき、この愛煙家のタバコと肺炎との因果関係など、相当か否かは結構難しいものです。
 
3.
以上のようにして、@、A、Bがあるとして、不法行為が認められると、次の問題が損害の額です。既に述べましたように、「差額」が基本になり、裁判所の判例が基準となりやすいですが、さまざま事象を金銭で見積もるのですから本当に難しいものです。
 ただ、もう1つ「過失割合」という問題があります。即ち、被害者にも不注意・落度があった場合には、加害者(不法行為者)の故意・過失とその被害者の不注意・落度との割合(過失割合)に応じて、損害額を減額するというものです。交通事故では、ほとんどの場合、双方にミスがあるため「過失割合」がよく問題となります。
 
4.
さて、そこで本問を考えてみて下さい。
@ 買い物客は、「誤って商品を壊した」というのですから、過失があり、損害があり、因果関係もあります。不法行為が成立します。従って、弁償しなければならないでしょう。
A 問題は、いくら弁償するかです。勿論、本問では値段が分かりませんので、仮に10,000円としましょう。商品が完全に壊れれば、損害は10,000円ということになるのでしょうが、常時多数仕入れているとか売れる見込みがなく返品の可能性が大きい場合など、事情によっては、仕入値が損害ということもあるでしょう。
 次に、商品の陳列方法に問題はなかったかも検討すべきです。買い物客にぶつかり易い位置にあったとか、壊れ易いのに殊更の保護措置を採っていなかったというようなときは、店舗側にも何割かの負担、つまりは弁償額の減額があるべきでしょう。

[前ページに戻る]