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法律マメ知識

【債権・債務】:過払い金の返還請求

Q. 最近、テレビCMなどで、弁護士に借金の相談をすると、払い過ぎた分が戻ってくることがあると言っていますがどのような場合でしょうか。また、弁護士への相談料はどのくらいかかりますか。
A.  確かに、テレビ、新聞などに「過払い金返還請求」などと出ていますが、なぜそうなるのかを説明します。
裁判員制度を知ろう〔2〕裁判員制度を知ろう〔1〕

1.「払い過ぎた分が戻ってくる」理由

(1) 「借金をする」場合、友人間であれば利息を付けないことが多いですが、貸金業者(サラ金、消費者金融)からの借り入れでは利息がつきます。この利息については、利息制限法という法律があり、利率の上限を定めています。すなわち、元本(元金)が10万円未満の場合は年2割(20%)、元本(元金)が10万円以上100万円未満の場合は年1割8分(18%)、元本(元金)が100万円以上の場合は年1割5分(15%)ということになっています。
(2)

ところが、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)があり、貸金業者は年29.2%までは利息をつけても良いことになっています(これを越すと罰せられます)。しかも、貸金業規制法という法律で、債務者(借金をしている人)が利息制限法に定める上限金利を越える利息分を任意に支払った場合には有効な利息の支払いと「みなす」と定めています(同法43条)。

(3)

たとえば、100万円を借りて、その後1年ごとに7年間29万2000円ずつ返済したとします。借金が100万円以上の場合、利息制限法に定める上限金利は年1割5分(15%)ですが、出資法に定める上限金利は年29.2%までですから違法でありません。そして、借金を普通に返しておれば「任意の支払い」であり、「有効な利息の支払い」とみなされます。従って、毎年の利息は1年間29万2000円であり、7年間ずっと29万2000円ずつ返済したとしても残元金は100万円ということになります。一生懸命返済しても元金は減らないということです。

(4)

しかし、このような法律や規定は変ですよね。利息制限法の上限利息と出資法の上限利息とがあるなどというのはおかしいです。この2つの法律の上限金利の間のことを「グレーゾーン金利」と言いますが、このことが多重債務問題を生む最大の原因なのです。

そこで、多くの裁判が起こされ、今日では、概ね利息制限法の上限利息を越える利息はすべて元本に充当されるというようになってきました(詳しく述べればいろいろな問題がありますが、細かいことは省略します)。

(5)

その結果、先に挙げた例でいうと、1年後に29万2000円を返済すると、利息制限法の上限金利は15万円(100万円×0.15)で、元本に充当される金額は14万2000円(292000円−15万円)となります。すると、残元金は85万8000円(100万円−142000円)となります。2年後にも29万2000円を返済すると、利息制限法の上限金利は12万8700円(858000×0.15)で、元本に充当される金額は16万3300円(292000円−128700円)となります。すると、残元金は69万4700円(858000円−163300円)となります。以後も同様に計算します。 

<返済額> <利息制限法の上限金利> <元本充当額> <残元金>
1年後 292,000円 150,000円 142,000円 858,000円
2年後 292,000円 128,700円 163,300円 964,700円
3年後 292,000円 104,205円 187,795円 506,905円
4年後 292,000円 76,035円 215,965円 290,940円
5年後 292,000円 43,641円 248,359円 42,581円
6年後 292,000円 6,387円 285,613円 △243,032円
7年後 292,000円 0円 292,000円 △535,032円
(6)

このように、この場合ですと、6年後には返済のし過ぎ(つまり過払い)となり、払い過ぎた分(過払い金)を返還請求できることになるのです。そして、その後も返済を続けると、毎年29万2000円ずつ過払い金が増えていくことになるのです。

実際には、100万円より少ない金額の場合が多く、利息制限法の上限金利も18%、20%となりますし、貸金業者の金利も29.2%より多少低いようです。他方、返済は毎月であることが普通です。これらのことから、通常、7年くらいから過払いになることが多いようです。

2.返還請求の方法、費用など

(1)

このような過払い金の返還請求は、債務者自身でもできます。通常は、貸金業者に対し、これまでの取引履歴を開示させた上で、利息制限法に定める上限金利で利息計算をし直すのです。そして、過払い金が発生すれば、貸金業者に返還請求をするのです。

もっとも、これらのことは知識・経験がないと苦労することも少なくありません。また、貸金業者が素直に支払ってくれないことも多く、裁判をすることになりかねません。そこで弁護士に依頼することが多くなってきます。司法書士に依頼することもあります。

弁護士に依頼する場合の費用は、実費(切手、印紙代など)と弁護士報酬ですが、実費はさほどかかりません。弁護士報酬は弁護士によって異なりますが、多くは「減額分の10%と回収金額の20%」ではないかと思います。つまり、先の例で言うと、債務者はまだ100万円を請求されていたのが、逆に53万5032円を回収できることになったのですから、減額分は100万円で、回収金額は53万5032円ということです(実際に回収した金額でなければなりません)。従って、10万円と10万7006円の合計20万7006円となります。

(2)  グレーゾーン金利のこと、過払い金請求ができることなどを知らずに、長い間返済を続けてきた人は極めて多いため、ここ2、3年は過払い金請求が極めて多くなっています。そのため、裁判の件数も多くなり、弁護士や司法書士の中には過払い金返還を専門にするような者も出てきたのです。テレビCM、新聞広告、車内広告などは、このような弁護士などがしているようです。また、報道によると、過払い金事案で多額の利益を得ながら脱税をしていた者が少なくなかったようです。

3.貸金業規制法の改正など

(1)

自己破産が増加していること、経済的理由による自殺者が年間8000人以上であることなどの原因となる多重債務問題は、やはりグレーゾーン金利の存在や貸金業規制法43条などのせいと言えます。そこで、平成18年12月、貸金業規制法が改正されました。グレーゾーン金利をなくすために29.2%という上限金利を20%に引下げること、過剰な借り入れにならないようにするため借り入れできる総量を収入の3分の1以下にすること、貸金業規制法43条を廃止することなどを定めたのです。

ただ、さまざまな圧力があり、これらは段階的にしか施行されませんでしたし、この完全履行の期限が今年6月なのですが、今これをもっと延ばそうとか見直しをしようという声も上がってきています。

(2)

確かに、今、貸金業者は経営危機に陥っているところが多く、消費者が借り入れができなくなっている面があります。「改正された貸金業法のために貸し渋りがおきている」とか「貸金業者向けに強化してきた規制を緩和すべきである」などという主張があるのです。

しかし、今必要なのは、高金利の消費者金融ではなく、低所得者向けの生活福祉資金や総合支援資金などの貸付、低利で安心できる公的貸付制度や中小企業者向けの制度融資の拡充などをしていくことが必要であろう。同時に、派遣労働を野放しにするような派遣労働法を改正して、安定的な収入を確保できるようにしていくことこそ肝要であろう。改正貸金業法は完全履行されるべきと言えます。


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