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法律マメ知識

【損害賠償】:時効とは

Q. “時効”とはどういうものでしょうか。特に、通常の生活上知っておいた方が良いものがあれば教えてください。
A. 下記のQ&Aに解説しました。
裁判員制度を知ろう〔1〕
質 問  “時効”という言葉をよく聞きます。たとえば、「殺人犯が時効完成1月前に逮捕された」という記事を見たことがありますし、「請求書を出していないと時効にかかっちゃうぞ」という話を聞いたこともあります。そもそも“時効”とはどういうものでしょうか。特に、通常の生活上知っておいた方が良いものがあれば教えてください。
回 答  そうですね、“時効”を一言でいえば、「ある一定の事実や状態が一定期間継続した場合には、この事実状態を尊重する」ということでしょうか。ただ、“時効”にはいろんな時効があり、「請求書を出して・・・・」というのは、民法上(私法上)の時効です。そして、「殺人犯が時効完成・・・・」というのは刑事法上の時効です。“時効”にもいろいろな場面があるということです。
 そこで、民法上(私法上)の時効ですが、これは、「ある一定の事実や状態が一定期間継続した場合には、この事実状態を尊重して、これに対して一定の法律効果を認めようとする制度」です。従って、本来は真実でないのに、真実として扱うようになってしまうことがあるのです。
質 問 どうして真実でないことも真実にしてしまうのですか。
回 答  なぜ、時効制度を認めるのかと言えば、概ね、(1)長期間継続した事実や状態は、仮に真実でなかったとしても、長期間継続しているうちに真実らしく見えてくるし、今更真実でないとしてしまうと法律関係が安定しなくなってしまうので法的に保護する必要があること、(2)真実の権利者であるといえども、長期間権利の行使を怠るような、いわば「権利の上に眠っている者」は法の保護に値しないこと、(3)出来事のあった時から間もないのであれば証拠があったのに、長期間が経過してから異議を述べられるような場合には証明が困難となることもあり、このような場合を救済する必要があること、などと説明されます。長期間継続した事実や状態は、やはり重みがあるという訳です。
質 問 なるほどね。
回 答  この民法上(私法上)の時効には、取得時効と消滅時効との2種類があります。取得時効は、他人の物であっても長期間にわたって自分の所有物のように占有や使用する者に権利を与える制度です。
たとえば、X氏が10年以上前から自分の土地であると思って耕作していたところ、本当はY氏の土地であったという場合、そのように自分の土地であると思ったことにミスがなければ、その土地はX氏の所有物になってしまうというのです。境界線の間違い、相続でもらったつもりであったが本当は別の土地であった、等というような場合に生じる問題です。【民法第162条】
 それでは、X氏が自分の土地ではなくY氏の土地であることを知っていながら、自分の土地であるように耕作などをしていたらどうでしょうか。この場合は、自分の物ではないと知っていたのであるから、そんな人の所有権を認めることはいかがかという気もします。しかし、この場合でも、20年以上、そのような状態が続いていると、やはりその土地はX氏の所有物になってしまいます。【民法第162条】
  これが取得時効です。とにかく、長時間続いた状態を尊重しようということです(上記の(1)や(2)の理由)。従って、10年、あるいは20年が経過する前に、Y氏が自分の土地だと言ってX氏の耕作を止めさせるようなことがあれば、時効の進行は“中断”したことになり、所有権はY氏のままになります。
質 問  取得時効のことは分かりましたので、今度は消滅時効のことを具体的に説明して下さい。
回 答  消滅時効は、ある人に権利があっても一定の期間その権利を行使していないと、その権利を消滅させてしまう制度です。もっともよくある例でいえば、A氏がB氏に対し、2000年1月1日に10万円を貸した(返済期限は同年3月31日)が、その後全く返済のないまま現在に至っている場合、A氏は、「債権は、10年間行使しないときは消滅する。」(民法第167条)という規定により、B氏に対する請求権(債権)を失ってしまいます。権利を有する者は速やかに行使しなさいということでしょうか(主として、上記の(2)や(3)の理由)。
 もちろん、この場合でも、A氏がB氏に対し、「金を支払え」という裁判をすれば、時効は“中断”し、その裁判が終了した時点から改めて時効はスタートします。B氏が、自ら借金があることを認めれば、やはりその時点から10年の時効期間がスタートします。
質 問  そうすると、口頭や手紙で請求をしただけでは駄目なのですか。時効は“中断”しないのですか。
回 答  そうですね、このような単純な“請求”だけでは、時効は“中断”しない、と理解しておいた方が良いですね。正確には、単純な“請求”だけでも、6ヶ月間は時効の完成(権利消滅)を延ばすことができますが、その間に裁判を起こすか、相手の承認を得るとかしないといけないのです。
質 問  そうですか。やはり長い間放っておくことは良くないということですね。
ところで、消滅時効の期間は、いつも10年間ですか。
回 答  いや違います。普通の債権(請求権)は10年ですが、債権の種類や内容によっていろいろと違いがあります。たとえば、主なものを挙げれば、次のとおりです。
@ホテル代、飲食代などは僅か1年間で時効消滅してしまいます。【民法第174条】
A売買代金、授業料、弁護士費用などは2年間で、請負代金、医療費などは3年間です。【民法第170、172、173条】
B不法行為による損害賠償請求権は、損害や加害者を知った時から3年間です。【民法第724条】
C離婚の際の財産分与の請求は、離婚の時から2年を経過すると請求できなくなります。【民法第768条】
D賃金、労災補償は2年間で、退職金は5年間です。【労働基準法第115条】
E商事債権(商売上の債権、銀行からの融資など)は5年間です。【商法第522条】
質 問  民事上の時効は分かりましたので、刑事法上の時効を説明して下さい。
回 答  刑事法上の時効は、民事上の時効と同じように、一定の期間が経過したことを重視し、そのことにより刑罰権を消滅させようとする制度であります。この制度の存在根拠は、(1)犯罪者に対する被害者や社会一般の応報感情が薄れ、非難が緩和すること、(2)犯罪者自身も、この間に罪の呵責(かしゃく)を受け、改善が推測されること、(3)時間の経過により、犯罪の立証が困難であること、などと言われています。
刑事上の時効には、一定期間が経過したことにより、刑罰権を取得するというような民事上の取得時効のようなものはありませんが、刑事法上の時効にも、刑の時効と公訴の時効とがあります。
質 問  「殺人犯が時効完成1月前に逮捕された」という“時効”はどちらの時効ですか。
回 答  公訴の時効のことです。公訴の時効とは、犯罪行為が終わった時から一定の期間が過ぎれば、裁判所に起訴することができなくなることです。つまりは、刑罰に処することができなくなるのです。
 この公訴時効の期間は、死刑に当たる罪については25年、無期の懲役・禁固については15年、長期15年以上の懲役・禁固に当たる罪については10年、長期15年未満の懲役・禁固に当たる罪について7年などと、重い罪から軽い罪に至るまで期間が定められています。
 ところで、現在、国会では、この公訴時効をもっと長くしようと議論されています。この豆知識がホームページに掲載されている間に変更されるかもしれません。マスコミ報道をよく見ててください。死刑に当たる罪については制限をなくそうとしています(その他もほぼ1.5倍の期間延長となります)。いつまで経っても許すことはできないということであり、昨今の重罰化の影響を受けています。しかし、上記(1)〜(3)の理由から期間はあった方が良いと思いますし、実際のところ警察ではいつまでも捜査体制を採っていなければならず、ケジメが付かないことになってしまします。
質 問 なるほどね。なかなか難しいところですね。
回 答  最後に、刑の時効ですが、これは、刑の言渡しが確定した者が、次の期間内にその執行を受けないと、時効の完成により、その執行を免除されるというものです(刑法31条)。
 すなわち、死刑は30年、無期の懲役・禁固は20年、10年以上の有期の懲役・禁固は15年、3年以上10年未満の懲役・禁固は10年、3年未満の懲役・禁固は5年、罰金は3年、拘留・科料および没収は1年、です(刑法32条)。
 しかし、この時効は、実際にはあり得ないことだと言えます。死刑、懲役、禁固および拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者を、その執行のために拘束することによって中断します、罰金、科料および没収の時効は、金銭支払いの執行行為をすることによって中断するからです(同法34条)。現在の行刑状態からすれば、その執行をできなくなるということは考えられません。
質 問  ありがとうございました。“時効”にもいろいろとあるし、民事上の時効では、私たちの日常生活にも関わりがありますね。これからは、特に消滅時効に関しては、何事も放っておかないことですね。
回 答 そのとおりですね。間違いのないようにして欲しいものです。

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