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法律マメ知識

【相続】:相続手続き後の遺産について

Q. 父が亡くなってから数年たちます。既に相続の手続きも終わっていたのに、先日、次のようなことがありました。どうしたら良いのでしょうか。
@ 部屋の整理をしたところ、父名義の預金通帳が出てきました。
A 同じく、生命保険証書が出てきました。
B 父の知人が訪ねて来て、父にお金を貸していたので返してもらいたいと言ってきました。
確かに父の筆跡で金20万円を借りたと書いたメモを持っていました。なお、その方は父が亡くなったことを知らなかったようです。
A. 下記のQ&Aに解説しました。
裁判員制度を知ろう〔2〕裁判員制度を知ろう〔1〕

 ご質問のように、死亡後数年してから財産が見つかるということはあり得ることですね。亡くなられた方が前もって分かるようにしておかれれば良いのですが、突然亡くなられた場合や日頃から財産を隠していたり、そもそも忘れてしまっていることもありますからね。しかし、そんなに慌てることはありません。以下に説明します。

 まず「相続の手続きも終わっていた」とのことですが、これには概ね2つの場合があります。1つは、遺言書があり、それに従って財産が分けられる場合、もう1つが、遺言書がなくて、相続人全員で遺産分割協議をする場合です。いずれの場合でも、トラブルが発生することがありますが、相続の手続きも終わっていた」ということは、まずは円満に解決できたのでしょう。

 ところが、新たな財産(相続財産=遺産)が見つかったということは、新たなトラブルの種が生まれたとも言えます。しかし、これの解決は、先に済んだという相続の手続き」の内容によって違ってきます。

すなわち、遺言書でも遺産分割協議であっても、現在あることがはっきりしている財産だけを分ける場合と、現在は見つかっていないが将来見つかったときの分け方まで決めている場合とがあります。後者の場合は、例えば、「将来新たな財産が見つかった場合にはすべてAが取得する。」とか「その他一切の財産はAが取得する。」と言うように決めておけば、父名義の預金通帳が出てきても、それはAが取得することになります。

 しかし、前者の場合(何らの取り決めをしていない場合)には、改めて、相続人全員が遺産分割協議をせざるを得ません。遺言書があっても、既に遺産分割協議をしたときであっても、新たに見つかった財産の分け方が決めてない限りは、新たに見つかった財産についてだけ、その分け方を決めることになるのです。

 なお、このことは、父死亡後数年であろうが、十数年後であろうが変わりません。従って、遺言書を書く場合も遺産分割協議をする場合でも、「将来新たな財産が見つかった場合にはすべてAが取得する。」とか「その他一切の財産はAが取得する。」と言うようにしておくべきと思います。 

 それでは生命保険証書が出てきた場合も一緒かというと、生命保険はちょっと特殊です。すなわち、生命保険は、亡くなられた方の財産(相続財産)とはみませんから、遺産分割の対象にならないのです。生命保険には必ず「死亡保険金の受取人」が書いてありますので、その受取人となっている方が受け取るのです。ただ、「死亡保険金の受取人」が「相続人」と書いてあれば、相続財産となりますので、前記2の場合と同じ扱いとなります。

 すなわち、遺言書でも遺産分割協議であっても、「将来新たな財産が見つかった場合にはすべてAが取得する。」とか「その他一切の財産はAが取得する。」としてあれば、今回の生命保険金はAが取得することになるのです。そのような記載がしてなければ、遺産分割協議が必要となります。

 それでは、新しく借金が判明したという場合はどうなるのでしょうか。

 まず、借金などの債務も財産(もっともマイナスの財産と言えます)であり、相続の対象になります。しかし、通常の財産(プラスの財産)と異なり、債務は相続開始とともに相続人全員にその法定相続分に応じて自動的に相続されてしまいます。従って、遺産分割協議でAが債務を取得すると決めても、そのことを債務の債権者(貸主)に主張することはできません。つまり、A以外の方も請求されたら返済しなければなりません。このことは、遺産分割協議で共同相続人の内のAに全財産を相続させるからAがすべての債務を引き受けるということにしても変わりません。全員が債務を相続するのです。

 もっとも、遺産分割協議のときに借金はAが支払うと決めたことが無駄かと言えばそうでもありません。確かに、A以外の方も債権者から請求されたら法定相続分に応じて支払わなければなりませんが、相続人全員の間では有効な取り決め(遺産分割協議)ですから、自分が請求を受けて支払った分は、借金を支払うと決められているAに支払い義務がありますので、Aに対して請求できるのです。

 因みに、マイナスの財産は絶対に引き受けない、相続しないと言うことであれば、プラスの財産と共に相続放棄をすればよいことになります。相続放棄をすればプラスの財産もマイナスの財産も相続しなくなるのです。もちろん、プラスの財産は欲しいが、マイナスの財産は要らないというような虫の良い相続はできません。

 次に、そもそも本当に借金があったのでしょうか。

 ご質問では、父の知人は父の筆跡で「金20万円を借りた」と書いてあるメモを持っているようですので、お父さんが借金をしたことは間違いがないようですね。領収書とか借用書なら良いが、メモでは駄目だということはありません。本当にお父さんが借りたということが証明できれば足りると言えます。

 しかし、ご質問では、お父さんが返したかどうかが分かりません。返したのに請求してきたのかもしれませんね(その方はお父さんが亡くなったことを知らなかったとのことですから、詐欺的ではない様です)。ただ、返したということは返した側で証明しなければなりませんから、領収書とか銀行振込依頼書のようなものがないと証明しにくいかもしれませんね。

 なお、死亡後数年ということですが、一応「時効消滅」も検討する余地があります(時効については先回お話ししています)。お父さんが借金をしてから10年を経過していると、その債権は時効消滅している可能性があります。そうであれば、返す必要がなくなります(返すことは構いません)。もし、その知人が貸金業者とか商売上の取引に関係するものであれば、5年で時効消滅します。


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